連絡先 email : kengo.suzuki[at]riken.jp Tel : 045-503-9111
  • Facebookの社会的なアイコン
  • Twitterの社会のアイコン
  • LinkedInの社会のアイコン
ワックスエステルは
​ジェット燃料等のバイオ燃料としての利用が有望な
パラミロンから合成される脂質です

ワックスエステルとは

ワックスエステルとミドリムシ

微細藻類の一種であるミドリムシ(ユーグレナ)は、高濃度のCO2存在下でも光合成によって良好に生育する生物です。ユーグレナは細胞内に多糖類であるパラミロンを貯蔵していますが、ユーグレナを酸素不足の環境に晒すとこのパラミロンを分解してワックスエステルという油脂を細胞内に作ります(文献1)。ユーグレナ由来のワックスエステルはバイオディーゼル燃料になり、車両用燃料やジェット燃料などの輸送用の燃料としての利用に加えてろうそくや化粧品の原料として高い需要があります(文献2)。

合成されるワックスエステルは、飽和脂肪酸と10〜18の鎖長のアルコールで構成されており、主な成分はミリスチン酸とミリスチルアルコールです(文献3)。合成されるワックスエステルは、飽和脂肪酸と10〜18の鎖長のアルコールで構成されており、主な成分はミリスチン酸とミリスチルアルコールです(文献3)。ユーグレナはパラミロンからワックスエステルへの変換によってエネルギーであるATPを獲得しこれを「ワックスエステル発酵」と呼びます(文献3)。

バイオ燃料としてのワックスエステルへの利用について

前述の通り、ユーグレナは細胞内に脂肪酸あるいはワックスエステルを大量に貯蔵しますが、このうちワックスエステルはバイオディーゼルとして直接利用できます(文献4)。一方脂肪酸はワックスエステルを得るために、アルコールとのエステル化によって処理する必要があります。したがって、ユーグレナ由来のバイオディーゼルの品質は、ワックスエステルの飽和度に依存します。

さらに、より短鎖の脂肪酸は良い凝固特性と酸化安定性を持つため、ディーゼル及び灯油の工業生産では、長鎖脂肪酸より中鎖あるいは短鎖脂肪酸の利用が優先されます(文献5)。ユーグレナがワックスエステルを合成する過程では脂肪酸を伸長する反応を触媒する酵素が重要な役割を果たしますが、そのうち3-ケトアシルCoAチオラーゼ(KAT)が伸長に重要な役割を果たします。KATはユーグレナの中に数種類存在しますが、その中でもKAT1の発現を抑制した場合、炭素長12のラウリン酸および13のトリデカン酸を多く産生するようになり、ワックスエステルの組成を人為的に変化させることが可能であることが示されています(文献1)。

さらに、E.gracilis由来の脂質(脂肪酸及びワックスエステル)は大部分が飽和しているか不飽和度が低いため、バイオディーゼルの生産に適しています(文献4)。また、ワックスエステルの生産量が最大0.8g/g という特徴(文献6)もE.gracilisのバイオ燃料としての有用性を裏付けています。E.gracilis由来のワックスエステルは反応が早く難燃性の多環芳香族化合物の形成が少ないため(文献7)、燃料製造の接触分解においても適している材料であるといえます。

ワックスエステル生産のための培養条件と株について

脂肪総量におけるワックスエステルの比は培養条件と株に強く依存します。例えば、エロンガーゼ阻害剤を添加した天然のE.gracilisの嫌気性培養では0.6g/g を実現しています(文献8)。さらに、ワックスエステル終了増加のための実験室レベルでの多段階培養法が確立されています。この培養法ではパラミロン合成量増加のために窒素欠乏状態で培養するプロセスが含まれており、これにより脂質含有量が7%増加しました(文献9)。また、脂質含有量増加変異E.gracilisのスクリーニングのために多くのサイトメトリー手法が開発されています。また、当チームでは世界ではじめて変異体作出のためのCRISPER-Cas9を用いた高効率なゲノム編集技術が確立しました(文献12)。

 

バイオ燃料実現に向けた将来の展望

現在ユーグレナは食品及び化粧品領域で利用が行われており、株式会社ユーグレナではパラミロンを幅広い分野で利用可能な素材として積極的に利用しています。一方、バイオ燃料生産としてユーグレナを利用するためには栽培技術や代謝光学的な技術の改善を行うことが必要であり、近い将来に化石燃料に変わる安価な代替品として提供できる可能性があると期待しています。

 

 
​引用文献

大阪府立大 ユーグレナのワックスエステル合成系の代謝改変に成功~ユーグレナ由来バイオ燃料の生産制御への第一歩~

1

Production of wax esters via microbial oil synthesis from food industry waste and by-product streams

2

Wax Ester Fermentation and Its Application for Biofuel Production

3

Bioproducts From Euglena gracilis: Synthesis and Applications

4

Advanced aviation fuels: a look ahead via a historical perspective

5

The Botryococcenes—hydrocarbons of novel structure from the alga Botryococcus braunii, Kützing

6

Catalytic cracking of wax esters extracted from Euglena gracilis for hydrocarbon fuel production

7

Variability of wax ester fermentation in natural and bleached Euglena gracilis Strains in response to oxygen and the elongase inhibitor flufenacet.

8

Method for production of euglena containing wax ester at high content, and method for production of wax ester

9

Highly efficient transgene‐free targeted mutagenesis and single‐stranded oligodeoxynucleotide‐mediated precise knock‐in in the industrial microalga Euglena gracilis using Cas9 ribonucleoproteins

10

​関連サイト

[日経クロステック]ミドリムシの油生産時の反応を解明、バイオ燃料に貢献

[スマートジャパン] ミドリムシ燃料の生産効率化に貢献、生産時の「臭い」の原因を解明

理化学研究所 バトンゾーン研究推進プログラム

ミドリムシが油を生産する際の硫黄に関する副次的反応を解明 バイオ燃料生産効率化に貢献する成果