みんなのミドリムシはどう解析される?-③DNA配列を読む-

各地でみなさんに採取し送っていただいたミドリムシ。微細藻類生産制御技術研究チームの研究室では、どのように解析されるのでしょうか。

手順は大きく4つ。①送っていただいたサンプルを培養して、②セルソーターを用いて単離し、③培養した各ミドリムシ候補についてDNA配列を読み、④読んだDNA配列を比較します。ここでは、③各ミドリムシ候補のDNA配列を読むことについてご紹介します。

ミドリムシを「ミドリムシ」と判断するには?

私たちは様々な生物に名前をつけて、分類をしています。ミドリムシ、特にEuglena gracilisは図1のEXCAVATAに分類されています(文献1)。これはミドリムシ、これはミジンコといったように、数ある生物の中から同じ仲間を判断するためにどうしたら良いでしょうか。昔から用いられている方法は、形態観察。「見た目」で判断することです。みなさんに送っていただいたサンプルもこれまでの培養や単離過程で、何度も観察し、ミドリムシを思われる細胞が増えていることを確認しています。

系統樹
図1 真核生物の系統発生(文献1より引用)

私たちが目的としているE.gracilis種は、200種以上いるとされているミドリムシ属(Euglena)に属しています。図2には、ミドリムシ属(Euglena)だけでなく他属の生物を含むミドリムシ目(Euglenales)に存在する生物の写真が並んでいます(文献2)。どれがミドリムシ属(Euglena)なのか、すぐに判断するのはとても難しいですね。さらに、E.gracilisは培養条件によっても形態(見た目)を変化させることがわかっており(文献3)、E.gracilisを見た目で適切に判断するには熟練された観察眼が必要かもしれません。

図2 ミドリムシ目の仲間(文献2より改変)

見た目だけでなく「DNA」でも判断する

微細藻類生産制御技術研究チームには、E.gracilisを見分けることのできる観察眼を持ったメンバーがもちろん在籍しています。ただ、みなさんに送っていただいた水サンプルから見つけ出したいのは、新しい品種のE.gracilisです。私たちの知るE.gracilisとまったく同じ見た目とは限りません。そこで利用するのが「DNA配列」です。種間でよく保存されているDNA配列を読むことで、これは同じ種、これは違う種といったように分類することが可能です。分子生物学の発展から、昔から見た目で分類されていた生物の多くが、DNAの配列によって分類されるようになってきています(文献4)。

例えば、リボソームRNA(rRNA)はタンパク質の合成過程(翻訳)ではたらくリボソームを構成し、とても重要であることから、rRNAをコードするDNA(rDNA)は種間でよく保存されています。このrDNAの配列を読んで比較することが、得られた各ミドリムシ候補が目的のE.gracilisなのかどうか確かめる、もう一つの判断材料となります。


今回は解析手順③として、なぜ各ミドリムシ候補のDNA配列を読むのかご紹介しました。次の手順④では、読んだDNA配列を比較解析していきます。

考文献

1) Adl, S. M. et al. The revised classification of eukaryotes. J. Eukaryot. Microbiol. 59, 429–514 (2012).

2) Kim, J. I. et alTaxon-rich multigene phylogeny of the photosynthetic euglenoids (Euglenophyceae). Front. Ecol. Evol. 3, (2015).

3) Ogbonna, J. C. et al. Heterotrophic cultivation of Euglena gracilis Z for efficient production of-tocopherol. Journal of Applied Phycology vol. 10 (1998).

4) 1. Kim, J. I. et al. Multigene analyses of photosynthetic euglenoids and new family, phacaceae (euglenales). J. Phycol. 46, 1278–1287 (2010).